The Sims 4 #7 「女王」の死・後編
レコをホテルに軟禁したヤンナは、ルーテルらについてはレコの安全のためにと口止めを要請した上で解放してもいいと告げたが、事態を案じたルーテルはアンジュとともにレコの側に残ることを選んでいた。奏は仕事のために戻ったが、このときルーテルは事務所の所長と喧嘩して飛び出してきたばかりで無職同然だった。売れない作家のアンジュは「暇人の俺らに任せろ」と請け負い、庶民には縁のない豪華ホテルをちゃっかり堪能した
朝になり、外部への連絡を禁じられたレコの代わりに、ルーテルは昨日レコの行方を案じていたユーアンに連絡を試みる。
ユーアンのスマホの着信に出るザハール ザハールがデカすぎてスマホの縮尺が……?
だが電話に出たのは(ルーテルの知人でもある)離婚協議中の夫ザハール・サジノフだった。
「……事情あって、俺が持っていた。勝手に電話を取ったと怒るだろうが、着信表示の、おまえの名が気になってしまってな」
番号を登録されていたのか、と居心地悪く思いながらも、それ以上に不穏を覚えたのは、バルタザールの携帯を兄が「横領」した一件や、今まさにヤンナがレコの携帯を取り上げた件が念頭にあったからだ。
「あの。差し支えなければ、事情とはどういう?」
警戒の面持ちでルーテルは尋ねた。
「今、奴は病院に居てな。俺もそこに居る」
「え? こんな時間に病院って、何かあったんですか」
「早朝に道で倒れて救急搬送された。さしあたり命に別状はなさそうだ」
奇妙に冷静な答えにルーテルは却って戸惑った。
「え……」〔……〕
「それで、奴に伝えたい話とは?」
— World System: Origin-E #20
「その……レコさんという彼の友人について、諸事情で具体的には明かせませんが、とある場所で無事にしていると伝えてほしいのですが」
「ああ。例の飛行機事故の絡みか」
レコのことは知っていたらしく、サジノフはそう言って、
「だが、何故おまえが?」
「昨日、僕は諸事情で知り合ったレコさんと一緒にいまして。別れた後に、トビアスさんから彼の行方を尋ねる電話が来たんです。そのときは詳細を知らなかったので答えられませんでしたが、後から——その、諸事情で所在がわかりましたので、お伝えしようと……」
「そうか。諸事情ばかりでさっぱりわからんが、言葉どおり伝えよう」
彼らしくサジノフはあっさり言った。
「暫くは、レコさんに電話を掛けても出られないでしょうが、心配しないでください」
「おまえ自身は、レコに会ったのか?」
「それは……言えませんが、存在は確認しています」
ふん、とサジノフは鼻を鳴らした。
「まあいい。奴の交友関係など、俺には関係のないことだ。わかった、伝えておく」
関係のないこと、というのが気にかかって、ルーテルはつい尋ねる。
「あの——やっぱり、離婚するんですか」
「ああ。だが、未だ成立していないから、扶助義務がある」
冷淡な響きに、ルーテルの声が険しくなった。
「義務って。心配ではないんですか?」
「無用に心配しても、どうにもならん」
「そんな……」
「安心しろ、むろん必要な看病はするし、仕事と音楽のことは俺にはどうにもできんが、子供らのことは負担を減らすよう計らう。倒れたのは大方過労だろうからな」
「……そうですか」
ルーテルは複雑な面持ちのまま言った。そういえばこの男は、バルタザールに対してもこんな調子だったのだ。
彼がユーアンを嫌っていることを知るザハールに露骨に怪しまれながらも、ルーテルは病状を知らせてくれるよう頼む。やがて、ユーアンは過労による心臓の病気で入院になったと報され、何かと多忙な彼に散々面倒を掛けていたレコは「自分のせいかもしれない」と落ち込んだ。
一方、ラヤラ一族は、「女王」アウニら十一名を弔うコンサート形式の「合同音楽葬」の実施を発表する。だが、その実質は次期家長決定のための音楽による戦いであった。
記者会見する「女王」の遺族たち
左から:イルヤの夫レオ、イルヤ、ティモ、ティモの息子アルヴィ、ヤンナ、ミカ
高齢のヨアキムは会見を欠席、代理で出席した娘のイルヤは野心を疑われる。ヤンナの右腕ミカも会見中に体調不良で退席し、波乱の幕開けとなった。
ミカのことを心配しつつも、レコは一族の争いを冷めた目で見ていた。 右奥は彼らの世話を任されたサンテリ家の副執事シンネマキ
「葬儀で、コンサートをやるって言ってたろ? 家長候補の連中がそれぞれ側近を率いて、威信を賭けて演奏する。そこで、こいつならラヤラの音楽を引っ張っていけると、残りの連中を納得させた奴が勝つんだろ。葬式すら、権力争いに利用されんだぜ? ご立派な女王も、死んじまえば憐れなもんだ……」
— World System: Origin-E #20
その夜、「メメント・モリ」の残るメンバーは、バー「バビロン」に集まった。
……レコが昨日まで「バビロン」で偽名で働いていたことは誰も知らなかったので、ここを選んだのはまったくの偶然である。
テーブル席に座って、彼らとしては非常に控えめに飲みながら、オリガはいつになく悄げた顔で、
「ほんと、弱り目に祟り目っていうやつ?」
「交通事故に、レコの実家の悲劇、ユーアンは離婚に病気ときた。厄年だな、次は私かおまえか」
容赦なくシドニーが言った。今日の彼女は仕事帰りだったので、オーバーサイズのグレーのカットソーとジーンズに素顔で、ライブステージでのゴシックなメイクにコルセットドレスのギタリストとは似ても似つかない格好をしている。
その点はオリガも似たようなもので、無地の黒いTシャツと短パンに金髪をラフに結い、ナチュラルメイクをしていた。
「ユーアンが倒れたのは、偶然の災難というより因果関係がありそうだが……」
古びたクラシックロックのバンドTシャツにチノパン姿のイーデンは、少々申し訳なそうに、
「元々忙しい奴だが、俺たちの事故のせいで余分に走り回っていたし、昨日はレコの件で随分メンタルに来ていたようだしな。君たちにも電話があっただろ」
「ああ。打ち合わせ中で出られなかったら、着信履歴が埋まったぞ」
「あいつ、そんなタマかしら、と言いたいとこだけど、レコのこととなると心配性だもんね、ほとんどあの子の保護者」〔……〕
「それにしてもレコは、今さら実家でどうしてんだろうねえ……」
— World System: Origin-E #20
三人も、連絡の付かないレコは一族の元にいるはずだというトビアスの見解は伝え聞いていたのだ。
「一族の勢力図が変わり、破門を取り消されて、呼び戻されるということもあり得る」
イーデンは言った。
「え? たとえ呼ばれたって戻んないでしょ? レコがクラシックのプロ奏者に転向なんて、想像つかないよ」
「十分あり得るさ、そもそも逆で、無名とはいえ一応クラシックのプロがアマのバンドマンに転向したんだ。あいつのクラシックを聴いたことはないから、俺も想像はつかないが」
「にしたって今さら復帰はしないでしょ?」
「断言はできない。俺の経験則では、ローティーンまでクラシックで育った人間は、若い頃こそロックがやりたいと思っていても、時を経て心境の変化で回帰したりする」
「おっさん、あの子確かまだ二十二とかよ? まさに今が若い頃じゃん」
「けどレコは、俺たち常人の一・五倍速で生きてるだろう。クラシックの舞台に立ったのは十歳だかで、国音を中退したのすらやっと十八のとき、パートナーと離縁したのは二十歳だ。あの年にして人生の紆余曲折を知ってる」
「そんなことになったら、バンドどうするのよ……」
オリガは不安そうな顔になる。
※今回の事件の前に、レコとイーデンが車で事故を起こして負傷する騒動があった。この話はいずれ……?
この後、彼らはゴシップ誌の記者が「レイ・ライノット」ことレコを探しにやってきた現場に遭遇して驚いたが、店長は人違いだし「レイ」は既にバイトを辞めたとして記者を追い払った。
一方、ユーアンが運ばれた病院に、ミカも極秘に入院していた。当初ただの疲労と診断されたミカだったが、ヤンナの高圧的な「院長指名」により時間外に呼び出された「魂術医師」である魔道士アリスンは、ミカの「まるで修行を積んだ魔道士のように抑制的な」特異体質を発見。自覚のないまま命にかかわる重病に至るかどうかの瀬戸際だと診断した。遠慮のないアリスンは「非常にレアな才能だが現代では何の役にも立たない」と直言してミカを閉口させた
葬礼での「決戦」が一週間後に迫る中、思いがけず入院治療を強いられたミカは焦ったが、護衛で実は恋人のシーラスに、ヤンナにある提案をしてほしいと頼む。
「ヤンナに、葬儀にレコを呼ぶよう、おまえから提案してみてくれないか。僕が言っても、また殴られるだけなんだ」
— World System: Origin-E #20
「レコ様を?」
「四重奏団はお兄様を失ったのだから、ヤンナの剣は戦う前から折られているも同然だ。ヤンナはエルセにファーストを弾かせ、ハンナを加えると言うが、無理だ、エルセにお兄様の代わりは務まらない」
冷淡にミカは断言した。エルセとハンナはともに親しい幼なじみの従姉妹だったし、第二バイオリン奏者のエルセは近親婚が通例ともなっている一族におけるミカの婚約者ですらあったが、それとこれとは別だ。
「それで、レコ様をカルテットに呼び戻すと?」
シーラスは驚いた。
「あの子は兄弟の中で一番、お父様の才を濃く受け継いでいるだろう? それこそ本当は、お兄様よりずっとね。ファーストはカルテットの要だ、レコが弾けば、勝てる」
挑戦的にミカは言ったが、シーラスは懐疑的な面持ちになった。
「どうでしょう。それでは、ロックになってしまいませんか。先週のライブをお聴きになったでしょうに」
ミカは瞼に指先を当てて少し笑った。
「……いいかもしれない。僕が本当に謀反を起こすなら、そうしてやるね、厳粛な葬儀の場で、反旗を翻す。あの子とステージに駆け上がり、忌々しい伯爵家の旗に火を付けて、女王にハードロックを捧げるんだ」
「聴いてみたいものです」
咎めもせず、親しい調子でシーラスは言った。
「わかりました。進言はいたしますが——今や事実上、我らの主はお嬢様です。万一にもお嬢様がお怒りになり、私を解雇されては、如何されますか?」
「怒られたとしても、ヤンナは今おまえをクビにはできない。彼女が、僕の忠誠を疑わない限りだけどね……ヤンナにはまだ僕が必要だから、その身辺を危険に晒すようなことはしない」
冷静にミカは答えた。
「ですが。いずれにせよ、お嬢様はレコ様の破門を覆すおつもりはないようです」
「おまえも本当は、解っているのだろう? 破門を取り消さないのは、ヤンナがレコを愛しているからだ。あの自由で美しい獣のような子を、無粋な罠に掛けて、再び檻に入れてしまうのは忍びない」
「はい」
「無論レコは、家に戻ってはこないだろうけれど。葬儀にくらい、来たっていいだろう。女王のためじゃない、お兄様のために弾いてほしいと、そう伝えてくれないか」
「ですが……レコ様は、一の若様にも、やはり遺恨がおありでは」
シーラスは懸念した。何しろ、四年前にレコのかつてのバンド「アルタ・エゴ」のプロデビューを徹底的に潰して解散に追い込んだ主導者は、女王でもサンテリでもなく長兄トゥオモなのだ。
「バンドのデビューを潰されたから?」
ミカは嘲笑の響きで応える。
「お兄様が妨害したバンドは、実のところ凡庸だった。曲は地球のブラックメタルの焼き直しみたいで、一応、ドラマーだけは後に別のバンドでプロになっているけど、総じてテクニックも大したことはなかった。レコのボーカルも未熟だったし——その上に、巧くもないくせにリードギターを弾きながら歌おうっていうんだから……観てはいないけど、ライブの惨状は想像に難くない」
例によって冷ややかな声音でミカは言ったが、その奥底にあるものが決して侮蔑などではないことも、シーラスにはよく解った。
「お詳しいですね」
素直に感心する。レコ本人も、この兄にそれほど詳細に消息を追われていたとは思いもよらなかっただろうが。
「……確かにね」
ミカは苦笑してから、真顔に戻る。
「けどあの子の今の音楽は、まるで違うだろう? もしもあのときデビューしていたら、『メメント・モリ』の音楽は生まれなかった。無名のアマチュアだろうと、本質には関係ない、あの子は辿り着くべき場所に辿り着けた、結果的には、運命だったんだ……。僕が、そう信じたいだけかもしれないけれど」
とミカは付け加える。
「レコは心優しいから、きっとお兄様を赦すだろう——その魂のために、もう一度だけ弾いてほしい、あの子の音を誰より愛していたトゥオモのために」
「古世人」と称される過去文明世界からの転生者であるシーラスは、盲目の魔道士だったが、実は元の世界でアリスンと同じ大学の「神術科」に学んだ旧友だった。二人は「数百年ぶりの再会」に驚く。 転生はファンタジーキャラの現パロセルフ二次創作をやる都合上の謎システムなので深く気にしてはいけない
深夜の病院で暫しシーラスと語り合ったアリスンは、アナーキー仲間だった友人が、この現代社会で敢えて誰かに仕えるという選択をした事実に違和感を覚えるのだった。
「かつての世で、あれから、私は神殿に入った。一級神術師の免状を得、己の力に自負もあったが、盲目の男は宮廷神術師としては受け容れられなかったし、神殿でも中枢には関われなかった。連合軍による迫害の時代を経て、帝国と神殿は自律と安息を取り戻したが、私の日々は変わらず、ヒラ神官とともに儀式に明け暮れる退屈なものだった」
シーラスは自嘲の響きで語る。
「一級神術師の肩書きなど、お飾りさ——といっては眉をひそめられる程度に、食うに困らず些かの贅沢もしたが、一人息子に望みを託してくれた父母は疾うにこの世の人ではなく、楽をさせることすら叶わなかった。結局私は生涯、己の力で何かを成したこともなければ、何かを守ったこともなかった。まさに空疎な、無意味な人生」
「無意味なんてことはないでしょう?」
アリスンは複雑な思いで旧友を見つめる。シーラスほどの極めて優秀な人間が、目が見えないというだけでその才を己の贅沢にしか役立てられなかったというのは実に遺憾なことだったが、彼にしてみればあらゆる人生は有意味で尊いものだ。
「いや、それは過去の話なんだ」
シーラスは微笑む。
「つまり、なぜ、という君のさっきの問いの答えはこうだ——この世界で誰かに仕えるなど、時代錯誤だとも思うだろう。だが、若様の音楽を聞いて、私は初めて何かを、誰かを守りたいと思った。私の特異な聴覚はこの音楽を聴くためにあって、私の神術師としての力はこの方を守るためにあったと、はっきり知ったんだ」〔……〕
「治療には最善の、最良の手段を取って貰いたい。私にとってかけがえのない、この生の一条の光明というべき、大切な御方なんだ」
— World System: Origin-E #20
「……はい。そうでしょう」
思わず、含むところある声音を隠しきれずにアリスンは応じた。この盲目の神術師にとって、一条の光明、などという例えは少々皮肉に響いたせいでもあったが、同時にその思い入れの深さに、近しかったはずの旧友に初めて奇妙な距離を感じたのだ。
かつての世に生きた頃から既に現代にも通じる平等思想を持ち、同時に独立独歩であったアリスンにとって、強すぎる忠誠心は、理解を超えた不思議なものだった。
彼らがただの飲み仲間を超えて忘年の友となったのは、根底にある、ある種のアナーキーな思想のせいでもあったはずだった。
通常、神術師を目指して帝都の大学に学ぶ学生たちは皆、ウラニア神殿、引いては魔道帝国ウラニアそのものの忠士となることを理想としていたが、神術科きっての優等生のシーラスはその実、野心家であり、もっと俯瞰的に世界を見ていた。
そんな彼が、皮肉にも身分など無いはずのこの世界で、思いがけず真なる主に巡り会ったらしい。
ちなみに、このときアリスンは、彼らしいことに、まったくもって気付いていなかった——即ちシーラスの、彼にとっては少々重すぎると映るミカへの思いが、純粋な忠誠心ばかりでもないことには。
翌朝、ユーアンは早速病室で仕事をしてアリスンに叱られていた。 なおユーアンは先月この病院でルーテルと乱闘騒ぎを起こして出禁になっていた。たまたま救急搬送されてアリスンの配慮で受け容れられたが、スタッフには危険人物としてマークされている。笑
「パソコンの持ち込みを許可した覚えはありませんが」
— World System: Origin-E #20
「鞄持って担ぎ込まれたんだから許可もなんもねえだろ、捨てろって?」
トビアスは意地悪い笑顔で応じる。
「失礼しました、使用を許可した覚えはありません」
この程度の不良患者には慣れきっているアリスンは冷静に訂正した。
「っても書類くらい片付けねえと、仕事は幾らでもあるんだ」
「トビアスさん。そもそもの原因が過労であることを忘れないでください。治るものも治りませんよ」
ミカの一件で科学医療偏重に危機感を覚えたアリスンは、魔道診療を拒否しているユーアンに再び検査を薦める。
「試しに、検査だけでも受けてみる気はありませんか? 薬草を使うわけではありません、『気』の流れを視るだけですから、信じていないのなら、無害ではありませんか?」
トビアスは手を止め、訝るようにアリスンの顔を見た。
「あ? やけにゴリ押すな。魔道の方が儲かんのか?」
「いえ。一労働者として言えば、総じて魔道診療の方が科学診療に比べ、割には合いません」
アリスンは率直に答えて、
「治療費のご負担も、平均的に見て科学診療と特に変わりません。こと『気』を診る基本的な検査は、併用して頂きやすいよう特別に安価に設定していますから、タダ働き同然です」
アリスンが言ったので、トビアスは少し興味深そうな顔になった。
「面白えことを言うな。儲からねえのに押し売りする理由は?」
「それは……非常にはっきり言いますと、昨日、私自身が、科学的な手法で見落とされた深刻な病気——厳密には、危うく深刻な病気に至りかけた状態を、魔道的検査によって発見できたからです。ちょうど同じように、主訴は眩暈でした」
あまりに直截に言われて、流石のトビアスも鼻で笑うこともできず真顔になった。〔……〕
「あんたらの見落としで、俺が死ぬ可能性がありそうなのか?」
— World System: Origin-E #20
「可能性といわれると、百パーセントないとは言えませんが……極めて低いとは考えます。魔道が怖いなら、無理強いはしません」
「は? 怖いわけじゃねえ」
心外そうにトビアスは剣呑な声を出したが、すぐにまたニヤニヤ笑って、
「おっと、その手には乗らねえぞ。残念だが俺は、必要ならプライドくらい売れる。怖いってことにしといてやるよ」
「……はい」
アリスンは苦笑しながらカルテに記した。アスクリット病院では、彼が院長であることもあり、ほとんどの患者は深く考えずに魔道医療の併用に承諾をする。科学診療がいい、という者でも、件の「タダ働き同然」の基本検査まで拒否されることは多くない。最近では魔道科学も世に認知され始めていたから、生粋の現世人も決して魔道をただの非科学的オカルトとは考えていなかったし、むしろトビアスのようなインテリに属する人間にこそ、これほど頑固に拒否されるのは珍しいことだった。
そのまま少し微睡んでいたが、新たな気配に目を開ける。
サジノフが無言で入ってきて、荷物の紙袋を傍らに置いたところだった。
「……ザハール」
「起こしたか。すまん」
サジノフは振り返る。
「荷物を持ってきた」
「どうした、おまえがこんな朝に来るなんて」
「時間休を取った」
トビアスはベッドの中から胡散臭そうに夫を見つめた。
「は、ここに来るためにか? 荷物なんか、おふくろに託しゃいいだろ、日用品は病院の売店で買えんだし」〔……〕
それからサジノフは言った。
— World System: Origin-E #20
「レコの行方については、心配なら、俺が調べてやる」
「どういう風の吹き回しだ? いや、まあ、それはいい」
「そうか。安全なところに居るというのは、嘘ではないだろう」
「刑事の勘?」
「まあな。声だけで判断するのは少々乱暴だが、俺はルーテルとサシで話したことがあるから、見抜けるつもりだ」
「ま、それでなくともあいつ結構、声に出るからな……。ラヤラの連中がレコを拉致したのは間違いねえが、安全ってことは十中八九、家長に名乗りを上げてるヤンナ・ラヤラの仕業だ。連中の勢力図を調べてみたが、ヤンナ派、即ちサンテリ派の残党にとっちゃ、レコの存在はアキレス腱だからな」
「そんなことをいつ調べた」
サジノフは呆れた声で言って、傍らに置かれたままのノートパソコンをじろりと眺めたが、トビアスは無視して、
「なんでルーテルの奴が噛んでんのかは、判らねえが——レコの身のために、却って今は首を突っ込まねえ方がいい。ヤンナは少なくともレコに危害を加えやしねえはずだ……新女王の座を狙う彼女にとって、破門した末弟は厄介だが、同時に武器にもなると俺は踏んでんだ」
「水は能く舟を載せ、また能く舟を覆す」
サジノフは感情の窺い知れない声で呟く。
「なんだそれ?」
「地球は東洋の経典、『荀子』の言葉だ」
トビアスは片眉を上げて笑った。
「は、あいつは水どころか炎の前のアルコールだ、覆されたらただじゃ済まねえぞ。扱えるかどうか、船頭のお手並み拝見ってとこ?」
皮肉にも久々にザハールと差し向かいで話をしたユーアンは、万が一自分が死んだら子供は任せたいとして、離婚協議の「停戦」を持ちかける。ザハールは「都合のいい取り引きだ」と批判したが、どのみち退院するまで事は動かせないとした。
一方、シーラスはヤンナにミカの意見を伝える。実はヤンナもカルテットのメンバーとしてレコを呼び戻すことを考えていたのだった。
豪胆なシーラスは、さらに独断でもう一つの献策を行う。それは、ミカが長年、密かに一族の掟に反して書き溜めていた創作曲を演奏することだった。初めてミカの秘密を知ったヤンナは驚いたが、作戦を受け容れた上で、ある未完成の曲を選択する。それは四年前にレコが追放された際、「弟は死んだも同然」と考えたミカが、葬送曲として捧げようとした作品だった。
それからシーラスは、根回しのためレコの元を訪れる。
「で、ミカの伝言って何。電話してくりゃいいのに、おまえがわざわざ来るなんて意味深じゃねえか」
— World System: Origin-E #21
「申し訳ない。実は伝言というのは、通していただくための偽りです。私の独断で、お願いに参りました」
「え?」
「端的に申し上げます。ほどなく、お嬢様からお話があるでしょうが、つまり、来たる葬儀に出席していただきたいという、そのお話を、レコ様には承諾いただきたいのです」
流石にレコは驚くとともに不快そうな表情を浮かべた。
「は? あいつ絶縁しといて葬式に出ろって、今さら何言ってんだ」
「絶縁を決定されたのは、お嬢様ではございません」
「だとして、ヤンナは復縁する気はねえと、昨日はっきり言いやがったんだ、同じじゃねえか。第一、戻れって言われても願い下げだっつってんだろ」
「レコ様。僭越ですが、暫しお怒りをお収めになって、最後までお聞きください」
家長争いに執心するヤンナに反発しているレコに、シーラスはミカが病床にあることを話し、彼を助けてほしいと頼む。
「……シーラス。どうすりゃいい? ミカを助けてやりたいが——俺には無理なんだ」
— World System: Origin-E #21
「お嬢様と、お話し合いください。お嬢様は仰っていたそうです、あなたの『レクイエム』は実に素晴らしかったと」
「けど、あれは即興でさ……」
とだけ呟くと、レコは再び額に手を当て、指の隙間からシーラスを横目に見つめた。
シーラスは立ち上がる。
「もう一つ内密に、未公表の情報を。お嬢様は葬儀にあたり、お名前を改められます。それから、お嬢様でもなくなります」
「え?」
「ほどなく我々は、ご主人様とお呼びすることになるでしょう。寧ろ、今すぐにでも」
「そりゃ、そうだけど……」
レコは俯いた。ヤンナを家の主と認めることは、サンテリとトゥオモの死を認めるということなのだ。
「レコ様、ご主人様の新たなお名前は、ヤンネ・ラヤラ様です」
「……男として名乗るってこと?」
「はい。サンテリ様のご次男として、此度の戦に名乗りを上げられる予定です」
「へえ……?」
あのスーツ姿と、ルーテルの疑念を思い起こしながら、レコは呟く。物心ついたときからもう一人の兄のような存在だったヤンナ・ラヤラが、公の場ではサンテリの長女として扱われていることに、彼とても少々の疑問と違和感を覚えていなかったわけではなかった。
より正確には、彼ら兄弟および幼なじみの従姉妹の間ではずっと、ヤンナはただヤンナであった。彼らは暗黙かつ当然の了解としてヤンナを従姉妹たちのような一族の淑女という枠組みには入れなかった反面、当人は父や世間が娘として扱うことに決して不満は見せなかったから、彼はルーテルに答えたように、ヤンナを男だとも女だとも思ったことがなかった。
「そっか。あいつ、思い切ったんだな」
レコは言った。外の世界を知った今、初めて、ヤンナの態度は前時代的で特殊な一族の世界におけるやむを得ない諦念の結果だったのかもしれない、と気が付いたのだ。
「はい。勝敗の行方がどうあろうと——ヤンネ様は、ご自身のお心に正直に生きてゆかれる決断をされました。そして、家長となられた暁には、新しいラヤラ一族の道を模索されるでしょう、偉大なるアウニ様とは、全く異なる道を。それは我らが新たなご主人様の、いわば真の野望です」
言うと、シーラスは少し微笑んだ。
「そしてこれは、私自身の野望ですが——私は、二の若様にもそうあっていただきたい。若様の御病は積年のお心の鬱屈によるものだと、医師は語りました。偶然、主治医が私の旧友でしたので、話を聞き出したのです。私は若様に、今度こそ自由に安らかに、お心のままに生きて、お心のままの音楽を憚ることなく奏でていただきたいのです。これからのご主人様の、そしてレコ様、あなたのように。あるいは、私が初めて若様とあなたにお会いした、あの日のように」
「あの日の……?」
レコは首を傾げる。幼い彼らが家出をして、異国の猟師だったシーラスに命を救われた夜、ミカの弾いたチェロの音色がこの男をすっかり虜にした話は聞いていたが、彼は疲れ切って眠りこけていたので、何の曲をどう演奏したのかは、知らなかった。
「あいつ、ミカが、自由に奏でたい音楽って何だよ? あいつは結局クラシックが、チェロが好きだし、俺みたいなはみ出し者になりてえわけじゃねえだろ?」
「それは、いずれ若様ご本人にお聞きください。ですが確かなことは、此度の四重奏は——事実上の新たな王が捧げる鎮魂歌です。即ち、皆様のお心のままに、新たなラヤラ一族の未来へと向かう音楽であるべきなのです」
シーラスの態度に、レコは彼がミカと恋愛関係にあることを見抜き、彼自身は自分の心に正直に生きる気はないのかと尋ねた。だがシーラスは動じず、生涯ミカに仕えることこそが自分の望みだと語る。
その日の午後、ヤンナは再びお忍びの男装姿でホテルにやってきた。家長の座を狙うヤンナの真の目的が一族の閉鎖的な世界の「革命」であることを悟ったレコは、協力はしたいが自信がないと語る。
「破門されてる以上、俺は、余所者だ。そんなのを、厳粛な葬儀のステージに上げて——ましてカルテットのストバイなんか弾かせて、顰蹙を買うとは思わねえのか?」
— World System: Origin-E #21
「顰蹙を買おうと、ねじ伏せればいい、実力でな。それが、ラヤラの世界がただの旧貴族とは異なる所以だろう?」
「実力って言われても……。俺に、そんな力なんかねえよ。親父とは違うんだ、俺は——俺の音楽とボーカルには自信も誇りも持ってるが、バイオリンはわけが違う。いや、たとえ、俺にとって最高の演奏ができたとしてもだぞ——それは絶対に、葬礼の献奏に相応しい音じゃねえ、ぶち壊しちまう。ミカの——それにおまえの、力にはなりたいけど、はっきり言って……自信がねえんだ」
その声が震え、レコは灰色の視線を彷徨わせて、同じ色の目がじっと彼を見つめた。
「自信がない? おまえとも思えん言葉だな。俺がなんのために、『レイ・ライノット』にレクイエムを弾かせたと思う?」
俺、とアンジュは口の中で呟いたが、特に気にはされなかった。
「……試験だったって言いてえのか?」
「まさにそのとおりだ。仮にラヤラの家におまえを拉致して弾けと命じても、おまえは、あの演奏はしなかっただろうからな」
「けど。何の曲をやるんだ? あんなふざけた演奏をさせてえわけじゃねえだろ?」
「おまえは決して、ふざけてなどいなかった。それは自分で解っているだろう。演目は——これだ」
ヤンナはじろりと弟を眺めると、アタッシュケースから楽譜を取り出し、レコの方を向けてコーヒーテーブルに並べた。
「何だこれ?」
一瞬、ぱっと見には普通の楽譜に見えたそれは、几帳面なカリグラフィのような手書きのインクで綴られている。
「ただしこの曲には、問題がある、相当部分が空白だ」
「……どういう意味だ?」
「ミカが書いたが、未完成なんだ」
レコは狐につままれたような顔になる。
「……は? 書いたって?」
傍らでアンジュも無言で目をぱちくりさせた。
「文字どおり、ミカが作曲した」
「は? 作曲って……かの女王アウニの葬儀で、現代音楽をやんのかよ?……冗談だろ?」
「全くもって大真面目さ。それに、現代音楽ではないぞ。創作曲ではあるが、クラシックだ——俺の定義ではな。既にヘインシウスに何かと吹き込まれただろう? 我々の道の先にあるものは、勝利か死かだ。だが残念ながら我々は誰一人、女王には及ばない、お父様にもな。即ち彼らと同じように当たり前のことをしても、待つのは死のみさ。ゆえに、私とミカは、新しい道に賭けることにした。レコ、自分で言うとおり、おまえは余所者だ、負けたとて断崖から落とされるわけじゃない。気楽にやればよかろう」
「……気楽って、おい……」
「聞いただろうが、ミカは今、病床にあって、曲を完成させることができない。この空白は、レコ、おまえに任せるとのことだ。ついでに、気に入らないところは好きに変えて構わないぞ、原作曲者がどう言おうと、私の権限で許可する」
「……は。俺にクラシックを書けって、正気かよ?」
「一から書けと言っているわけじゃない」
レコは悩みながらも楽譜を捲った。
神経質で几帳面なミカの筆跡が、脳裏に悲壮美というべき崇高な弦楽四重奏のソナタを響かせる。
女王の掲げた古典至上主義により、現代のラヤラ一族においては実質的に作曲は禁じられているのだ。あの真面目な兄が掟に反して密かに曲を書いていたという事実自体が驚きをもたらしたが、名高い本物の古典と比べても遜色のない、それでいて数百年前の感性とは明らかに異なる音運びに、レコはいよいよ驚愕し、やがて驚愕を通り越してふっと笑った。
「これを……ミカが書いたって? マジかよ、あいつ……知らなかった」
「大作曲家になるかもしれんだろう?」
ヤンナも笑い、それから真顔に戻ると言った。
「実のところ、俺たちとて闇雲に奇を衒ってかきまわそうというわけじゃない。だが、もしもラヤラの連中がこれを受け容れるとすれば——それは即ち、旧態依然とした過剰な古典主義に終わりを告げる覚悟を決めるということ。勝利か死かとは、そういう意味だ」
病院を訪れたヤンナは、ミカの「病」は積年の心の鬱屈によるものだと聞かされ、シーラスに複雑な心境を吐露する。
シーラスの案内でヤンナは病室に入る。
一瞬ぎょっとしたのは、ベッドに寝かされているミカの顔に物々しい酸素マスクが付けられていたからだった。
それを察したようにシーラスは言った。
「酸素投与は魔道的に深い眠りを維持するためとのことですから、あまり心配なさいませんよう」〔……〕
「……思えばミカにはずっと、厳しい言い方をしてきた。さらには、このようなときなればこそ、己を律し、決して隙を見せるなと——追い詰めてしまったかもしれん」
— World System: Origin-E #21
まだ少し痣の残るミカの頬に、ヤンナはそっと触れる。その表情が僅かに曇った。
「だが事実、隙を見せれば付け入られる、私もミカも、弱い立場なのだ。……未だ、今はな」
「若様は、ご理解くださいます。それに若様の真の心の負荷は、あなた様のお言葉などではありません。おそらく、最大のそれはもう、取り除かれました」
「言葉には気を付けろよ」
ヤンナはふっと唇だけで笑った。
「だがレコは、承諾したぞ。ヘインシウス、おまえには感謝する」
「出すぎたことをいたしました」
「構わん。だがひとつ——今後、葬儀までは、ミカの側を離れずに居てやってくれ。むろん相応の手当ては出すし、寝るなとは言わない。だが目覚めたときに、おまえの姿がどこにもない、ということにならぬよう、傍らで寝ろ。病院にはペルトネンが掛け合っておく」
ペルトネンは、サンテリ・ラヤラ家の家令兼主執事である。長年、主に代わって家の一切を取り仕切っていた彼女は、父と親しく会話をすることもなかった子供たちよりよほど率直にその死に心を痛めていたが、悲しみにくれている暇などないのは同じだった。
「かしこまりました」
「ヘインシウス。私が勝てば、おまえの身も自由だ」
含みをもってヤンナは言ったが、
「私は生涯、若様をお守りするのみです」
「ふん……まあ好きにするといい。ミカが起きたら伝えてくれ、レコからの伝言だ——あの曲が好きだと。それから、気分によってはチェロ譜も書き変えるから覚悟しろとのことだ」
期日が迫る中、レコは寝食も忘れてミカの書いた自分宛の葬送曲の補作に没頭し、蘇った死者が生者を連れ去るという「墓場の死の舞踏」という(ゴス趣味全開の)ストーリーに仕立てて完成に近づける。だが同時にチェリストとしてのミカが世間に評価されないことに内心不満を抱いていた彼は、「全てにおいて地味」なチェロパートに大幅な改訂を加えるかどうかで悩んでいた。
「俺、一族の歴史に残る特別な場で、ミカにこのソロを弾かせたいんだよな……。あいつって元々、自分のテクをひけらかす気がねえんだ、おかげで顔で売ってるなんて悪口言われて」
不満そうにレコは口をへの字に枉げたが、
「葬礼はテレビ中継されるし、クラオタだけじゃねえ、全国のいろんな奴が見るだろ? そこであいつの演奏力を見せつけるには、スローでシンプルな美メロより、ド派手な打ち上げ花火みてえな方がいい。正直ミカは情緒よりテクが先行するタイプだから、あいつが書いたみたいな旋律はほんとは向いてねえ。そもそもシンプルな音楽で魅せるのはバカテクよりずっと難しいんだ、親父みたいな憑依型の音楽家でもねえと、どだい無理な話……」
レコの綺麗な灰色の目が少し曇るのをルーテルはじっと見つめていた。決裂したとはいえ、レコは依然として亡き父親への親愛を捨てていないように思われたし、同時にその存在は、演奏家として超えられない壁でもあったのだろう。〔……〕
「けどそもそもの、優劣じゃねえ好みの違いってかさ……第二の問題はそこなんだ」
神妙にレコは言った。
「一曲弾いてわかってきたけど、作曲家の癖ってか、理念なのかもしれねえが……あいつは常に、必ずどっかに中心を定めて固定して、そこに向かって綿密に積み上げるんだ。つまりミカがここ、バトンを渡すバイオリンを中心に書いてんのは俺にもわかんだよ。チェロはその水先案内人だから、ミカにとっては決して中心を奪っちゃだめなんだ。けど俺は足し算が好きだし、バンドってのは、個性と個性が取っ組み合ってこそ最高になるって思っててさ」〔……〕
「レコさんの好きに変えていいと、お姉さんが言っていたんですから。君がいいと思ったんなら、遠慮する必要はありません。僕は、聴きたいです」
— World System: Origin-E #21
ルーテルは強い調子で食い下がる。
「まあ俺も、ぶっちゃけ断然そっちが聴いてみたい……」
アンジュが賛同する。
レコは再びにやりとして、
「そっか。ま、ここでチェロが派手に盛り上がっちまって、中心がブレて困るってなら、続くバイオリンはもっと派手に盛り上げて、こっちが中心だったかって思わせりゃいいだけだ。俺は目立つことにかけちゃ、負けねえ自信あるし」
「ぜひ華やかな超絶技巧を聴きたい」というミーハーな(?)ルーテルとアンジュの後押しにより、レコは改変を決意し、徹夜で楽譜を仕上げた。
ミカは「未だ発病していない病」の治療のためにかえって体調が悪化し、葬儀のステージに立てないかもしれないと塞ぎ込んでいたが、レコの完成させた曲に感銘を受け、ようやく少し元気を取り戻す。
「あの子は……悔しいけど天才だ。僕が書きたかったものを、いや、僕が書きたくとも書けなかったものまで、完璧に理解してる。あの自由で美しい猛獣が牙を封印して、僕が書けなかったものを書いてくれた——栄誉じゃないか」
〔……〕
「それにしても。チェロ譜も書き変えるから覚悟しろとは言われたけど、本当に、容赦なく変えてきたな……。自分ではチェロなんてろくに弾けないくせに、予想外のところにとんでもなく難しいソロを入れてきた——いきなりこれを、人生を懸けた舞台で弾けって? もう丸三日も弾けていないのに……」
— World System: Origin-E #21
ミカは文字通りに頭を抱えてぼやいたが、それはこれまでの重苦しい本当の絶望とは、明らかに違っている。
「そのことですが、レコ様から伝言がございます」
「伝言?」
「はい。チェロは地味でしたから、変えたが、主役は変えていないつもりだと。それから、この難関パートを完璧に弾いてみせれば、世間の連中に二度と顔で売っているとは言わせない——とのことです」
真顔で淡々と伝えられて、ミカは呆れた。
「別に、素人の中傷はどうでもいいけど……地味だって? いい旋律だと思ったのに、そんな考えで上辺のテクニックを誇示しろだなんて、あり得ない、まったく下品だ」
冷ややかな目で大いに毒づかれて、シーラスは伝言を告げる判断をしたことを一瞬悔やみかけたが、ミカはふっと再び笑みを浮かべる。
「まあいい。僕たちは追い詰められたレジスタンスも同然なんだ、品良く澄ましている場合じゃない——今回はあの子の流儀に従ってやろう」
続く……
登場人物
脇役(?)のみなさん

ヨアキムの長女

イルヤの夫
エキストラのみなさん
舞台裏
構図優先で間取りが謎すぎるホテルのスイートルーム(ハリボテセット)
都心の高層階ホテルとしてSan Myshunoのビル上に作って撮影するも、すぐに山が映り込んでしまって何度も移動した
貴重な都会ワールドにくらい山が無くてもいいのに……! そもそも愛用のSan Myshunoも区画配置のクセが強く(地上の区画は悉くビルと隣接しない)、フツーのビジネス街みたいなのを撮るのが難しいTS4。Del Sol Valleyは広々しすぎているし、Ciudad Enamoradaにもビル密集地帯があるがやはり区画に隣接していない。
病院ベッドのカップル向けポーズがいろいろあって使いたかったのに、主のベッドに無遠慮に座ったりできない主従カップル&離婚寸前のギスギス状態カップルのため結局使えなかった
こういう感じの親密なやつとか
視線の角度が合うポーズが無く、素人が自作する
昔はポーズ作成には古いバージョンのBlenderが必要だったりして私の環境では動かなかったが、今はいろいろ変わっているようで。今回EA RigPlusというものを発見して使ってみるも結局、絵心(?)がないと不自然に……。いくつか単純なものだけ作ったが、座ってるとか腕組みとかのアセットが最初からあって助かった!
使用ポーズなど
記者会見 PRESS CONFERENCE
Poses: simsxen / CHModder / Herecirm / ratboysims / LukaZluka / flowurtheweirdo
Build/Buy CC: Felixandre / Chateausims / The Regal Sims / TheJim07 / MLys / Wondymoon / SrslySims
Deco Sims: The De Villier / lazysimmies / madebycoffee / Reigningsims / InnerCitySimmer / TrentonRoyals
ホテルの部屋 HOTEL ROOM
Poses: Lime-laine / ninawhims / aith / nagallz / Natalia-Auditore / rebouks / Simmerianne93 / SamsSims / Mikky18 / FlagranteDerelicto
Build/Buy CC: see #006
バー BAR
Poses: WildStrawberry4Sims / Tatiana / AA / wonderscotts
Build/Buy CC: see #006
病院・廊下 HOSPITAL HALLWAY
Poses: Anika / madebycoffee / GREENSOUL / Herecirm
Lot: "Hospital Central Universitario" by casmar (Modified by me)
Build/Buy CC: kardofe / Syboulette / Around the Sims / Severinka / Felixandre / DOT
Deco Sims: Reigningsims
* Also used on #009
病院・病室 HOSPITAL ROOM
Poses: Simmerianne93 / TT / Fenrir / Herecirm / Akuiyumi / MelBennett / Natalia-Auditore
Build/Buy CC: AnotherSimsStory / kardofe / Pierisim / ArtVitalex / awingedllama / TNS-TS4 / Syboulette / NynaeveDesign / Around the Sims / BuffSumm / MXIMS / Simenapule / pacosims / Wondymoon / PlatinumLuxeSims / Soloriya
* Also used on #008–009
病院・休憩室 HOSPITAL STAFF BREAKROOM
Poses: Siimplysims
Room: "Employee Breakroom" by promisepotion (Modified by me)
Build/Buy CC: Around the Sims / Felixandre





























