The Sims 4 #6 「女王」の死・前編
前回の続きです。現在、元ネタの小説は公開していないので引用を挟みつつ……
現在〜「女王」たちの死
※現在といっても作中の架空世界の文明は本当は2010年代くらい。撮影ではオブジェクトの都合で実際よりハイテク世界に・笑
レコ・ラヤラが一族を追放されてから四年の歳月が流れた。
「女王」アウニ・ラヤラは、その親族十人とともに、遠い異国の飛行機事故によって不慮の死を遂げる。アマチュアバンドマンとして活動しながら依然として貧乏生活を送っていたレコは、ニュース速報でその死を知ることになった。
ある春の日曜日、レコは知り合ったばかりのルーテルと(初対面でいきなり借りた金を返すべく ※この話は別途撮るかもしれない)サイケデリックな中華料理店で食事をしていた。
「箸の使い方、教えてやろうか? こないだ、奏に教えて貰ったんだ」
要するに、この店とメニュー選択とは、覚えたばかりの道具を使いたい、という子供のような動機だったらしい。
「ま、形はちょっと違うが、使い方はきっと同じだろ。こうやって中指をな——」
ルーテルはちょうどレコが奏に教わったときのように、鏡像で真似してみたが、うまくバランスが取れない。
「む、難しいですね」
「ヘタクソだな、おまえ」
身も蓋もなくレコは可笑しそうに大笑いした。
「君が器用なだけですよ……」
どうにか水餃子を不自然につまみながらルーテルはぼやいた。内心フォークで食べたいと思ったが、付き合うことにしたのは、どこか既にこの奔放な青年に妙な親しみを覚えていたのかもしれない。
(それにしても、やっぱり、全然違うな)
とルーテルは考えた。
実のところ、あれからこっそり——というのはアンジュには相談せずに一人でCDショップに赴いて、「メメント・モリ」のアルバムを一枚買い求め、聴いてみたのだ。
ちなみに百貨店の「ギネス&アルダーソン」に入っている普通のショップなどでは扱っていなかったので、転々とした後、初めて入る「ケヴィンズ・レコード」で漸く手に入れることができた。
トビアスのバンドだと思うと抵抗がなくはなかったが、アンジュが取り憑かれたように語っていたレコの作る音楽が如何なるものなのか、どうしても気になってしまったのだ。
当然ながらデスメタルなど聴いたことのなかったルーテルは、初っ端から耳をつんざく荒々しいグロウルのボーカルと地響きのような超高速ドラムに腰を抜かして慌てて音量を絞ったが、慣れてくると案外ハマってきた。
メタルどころかロックも現代ポップスもほぼ知らず、楽器にも疎いルーテルには、どれが何の音であるのか全く判別がつかなかった——という以前に、音楽がどういった楽器で構成されているのかなど意識もしなかった。だがそのせいで却って、アンジュや奏とは異なり、理屈抜きの感覚で混沌とした音の塊として聴いて、さらには彼らの音楽の様々な要素のうちでも、レコのボーカルに強く惹きつけられたのだ。
今ぼそぼそと喋りながら目の前で餃子を食べている青年が、あの地獄と天国を超高速で行き来するかのような歌とも言い難い歌を歌っているのだと思うと、なんとも不思議な気持ちになる。〔……〕
「……実は、レコさんの音楽は聴いたんです。『メメント・モリ』の、お店の人に尋ねたら二番目に作ったというCDを薦められましたので、買って聴いてみましたら、とても素敵でした」
「え? 聴いたのか。ってか、よく売ってたな……」〔……〕
「僕たちの時代の音楽とは、概念からまったく違いましたから、最初は驚きましたが。何度も聞いていると、気持ちが高揚して、嫌なことも忘れて、前向きになれるというか。朝の太陽の光を全身に浴びたみたいに、元気が湧いてきました」
— World System: Origin-E #19
「へえ……朝の太陽?」
レコは面白そうに笑い、
「そいつはずいぶん斬新な感想だな、初めて言われた……。ま、メタルは大概、アドレナリンが出て戦闘的にはなるもんだけど——生きてりゃ、戦わねえとだろ?」
何と戦うのだろう、とルーテルは少し思ったが、尋ねはしなかった。
……そのとき、異国のドキュメンタリー番組を流していた壁掛けテレビの画面が切り替わり、ニュース速報の音が入った。
「臨時ニュースをお伝えします——」
急に現実に引き戻されるような、共通語のアナウンサーの声がした。どうやら、フシリェンナヤ国で起きた飛行機墜落事故の報道らしかった。
音量はそこまで大きくなかったので、店のBGMと雑音に紛れて断片的にしか聞こえなかったが、
「——乗客の生存は絶望的とみられ……によりますと……の楽団員が複数搭乗しており……音楽監督兼首席指揮者のアウニ・ラヤラ氏および、首席バイオリニストでありソリストとしても活躍するサンテリ・ラヤラ氏も含まれるものとみられ——」〔……〕
ルーテルは全くどうしていいかわからずに立ち尽くした。
— World System: Origin-E #19
繰り返し流れるニュースをレコはじっと見つめていたが、やがて存外に落ち着いた声音で、
「へえ……死んだのか」
とだけ言った。
「俺の親父なんだ」
微笑を湛えたサンテリ・ラヤラの顔写真が映し出される画面から目を離さないまま、レコは呟いた。
「あと、祖母ちゃんと、上の兄貴と。その他もろもろ」
平静を装いつつもショックを受けるレコをルーテルは心配したが、やがてレコは新しく始めたという音楽バーのバイトに行くと言って去ってしまった。
仕事中(休日出勤)にニュースを知ったユーアンは、レコに連絡を遮断され、「宿敵」ルーテルに電話をしてきた。厳密にはルーテルが一方的に「宿敵」認定している
ルーテルの愛車は友人に感化されて「勢いで」買ったクラシックなオープンカー
そのまま駐車場に向かい、車の扉を開けたとき、携帯電話が鳴った。
— World System: Origin-E #19
知らない番号からの着信だったが、ひとまず通話ボタンを押した。
「ルーテル? 俺だ、ケーラー法律事務所のユーアン・トビアス——ちょっと聞きたいことがあってさ」
予想外の名に、一瞬凍り付く。
何故あの男が彼の電話番号を知っていたのかはわからなかったが、何しろ自分の夫のパソコンをハッキングして恋敵の住所を突き止めた男だから、どうとでもなるのだろう。
「……なんでしょうか」
露骨な警戒の声でルーテルは尋ねた。
「レコ・ラヤラと一緒に居るか? おまえと会ってるとだけ聞いたんだが、真偽不明だし、一方的に電話を切りやがって、掛け直しても出ねえ——電源が切られてる」
明らかに焦燥の響きでトビアスは言った。
「え?」
あれ以来、誰からもレコに電話はかかってこなかったが、電源を切っていたのか、と今さらルーテルは気が付いた。
「ちょっと至急の用があってさ——」
毎度揶揄い混じりのふてぶてしい物言いで彼の神経を逆撫でしていたこの男の、初めて聞く、震えを抑えるような切羽詰まった声に、ルーテルはまったく落ち着かない気持ちになって思わず遮った。
「実家の、ご家族のことですよね。飛行機事故の」
ルーテルは、具体的な場所までは知らないがレコは音楽バーにバイトに行ったと教え、ユーアンは「酒に逃げられない分、家にいるよりマシ」だとひとまず安堵した。
「ありがとな、ルーテル、おまえが悪人じゃなくて助かった。それと勝手に電話番号を調べて悪かったな」
— World System: Origin-E #19
「いえ……。ですが、レコさんはアンジュの友人と言っただけなのに、どうして僕だとわかったんです?」
ルーテルは思わず尋ねる。さっき答えたようにレコとはあの日がまったくの初対面だったのだ。
「そりゃ、不用意なあいつが急に名前を伏せるなんて変だろ? 古世人のアンジュの友人、俺に名前を言えねえ相手となりゃ、おまえくらいしかいねえ」
トビアスは漸くいつもの調子に戻って、意地悪く笑った。
「その程度の探偵くらいできねえと、こんな稼業はやれねえぞ? ひよっこ」
ルーテルは素直にむっとするとともに若干の安堵を覚えたが……
自宅に帰ったルーテルは、テレビで「女王」が想像以上の有名人であったことを知る。
そのままぼんやりとニュースを見ていたところ、サンテリの娘と息子という若い二人がホテルの前で報道陣に追いかけられている映像が入ってきた。
— World System: Origin-E #19
(あ……お姉さんたちは、無事だったんだ。レコさんは知っているかな)
ルーテルは映像に見入った。
ブレ気味の映像に、揃ってブロンドの髪をした二人の姿がちらちらと映る。
ショートカットで背の高い娘は化粧気のない顔に大きなサングラスをかけ、ベージュ色の地味なパンツスーツで、名家の令嬢というよりはお忍びの芸能スターのような姿だったが、アイドルのような美貌の息子の方は、姉とは対照的に端正にメイクをして、近世の貴族のような華美なフリルの付いた白いブラウスを着ていた。
息子の方の顔がアップになって、綺麗な人だ、とルーテルも思わず感銘を受ける。その貴公子然とした愛らしい顔が、侮蔑するような氷点下の眼差しでカメラを容赦なく睨み付けた。
(似てる……)
ルーテルは思わず画面に見入った。
後で思えば、そっくりと言えるほどの要素は目の色くらいしかなかったのに、今の美貌の青年は、レコに極めてよく似ている気がしたのだ。
記者たちは執拗に追いかけてコメントを求めたが、ボディガードのような黒スーツ姿の男女にブロックされ、成果を得られないまま、二人はホテルの中に消えていった。
その夜、レコが「レイ」という偽名でバイオリン弾きのバイトをする胡散くさい音楽バー「バビロン」に、立派なバイオリンを持った謎の若紳士が現れ、彼に場違いなクラシック曲をリクエストした。
カウンターでは常連客が、戻ってきた店長と話し込んでいる。
「しかしサンテリも気の毒にな……」
レコはびくりとしたが、何食わぬ顔で素通りする。
ここに集うのはクラシックではないにせよ音楽好きの連中であったから、飛行機事故のニュースはほぼ百パーセントに近い確率で話題に上る。
あまりに、やってくる誰も彼もが口にするので、次第に麻痺してはきたが、それでも流石に完全に心穏やかにはなれなかった。
レコが顔をしかめたとき、カウンターの隅でウイスキーを飲んでいた茶色いスーツの紳士に声をかけられた。
「おい。バイオリンを弾いてくれ。フレイヴァルツの『レクイエム』を頼む」
「え……?」
予想外のリクエストに戸惑いながらレコは振り返る。
レトロなデザインの高級スーツを着込み、七三分けにした金髪に髭を蓄えた紳士は、よく見ると意外に若く三十手前に見えたが、それよりも、ある理由からレコはぎょっとした。
「どうした。ここは、クラシックは御法度なのか?」
この店は本来ノンジャンルを謳っていたが、数年前に代替わりした店長の趣味で奏者も客層も次第に偏って、近頃では実質的にほぼロックばかり演奏されていたのだ。
「いや——誰もリクエストしねえだけで、特に決まりはねえが……」
レコは半ば上の空に答える。
驚いたのは、男の顔立ちが、彼の知っている人間に、それも全く予想外の人間に妙によく似ていたからだ——実姉のヤンナ・ラヤラに。
ラヤラ一族は近親婚が多かったので、遠縁でも容貌の似た者は多い。だが少なくとも知った顔ではなかったし、相手の方も、彼の素性を知って話しかけたわけではなさそうだ。
そもそも渦中の一族の人間が、こんなときに七区の猥雑な店で飲み歩いているはずもなかった。
「あと、エレキしかねえけど、いい」
「それも悪くはないが、よければ俺が貸してやろう。他人の楽器は弾けないか?」
男は言うと、足元のバイオリンケースを指した。
「……は。持ってんの。あんたバイオリニスト?」
ギターやベースを背負ったスタジオ帰りのバンドマンならともかく、クラシックの楽器を持っている客は初めて見た。
そもそも、タトゥにボディピアスだらけの不良青年のような風貌で器用にロックナンバーを弾きこなす「レイ」を面白がった店長が気まぐれに採用するまで、この店にバイオリン弾きなどは居なかったのだ。
男は答えずに黙ってケースを開け、再びレコはぎょっと二度見した。
「え……スピネリ?」
茨のような彫刻デザインのスクロールを持つそれは、こんな場所に持ち込むには全く相応しくない、彼が借金をして手に入れたSiren-ZEROが百挺は余裕で買えるであろう、歴史に名高いコリーナネラの名工の手になるオールドバイオリンで、プロの演奏家でも一流ソリストでもなければそうそう持ってはいないような逸品だったのだ。
「あんた誰……?」
再び先ほどの疑念が蘇り、レコは大いに警戒したが、紳士は平然とバイオリンを取り出すと手渡す。
「おまえは新人のようだな、こんな場所でその問いはタブーだぞ。——どうだ?」〔……〕
レコは恐る恐るバイオリンを受け取ると、肩にあて、弓を引いた。
— World System: Origin-E #19
怖ろしく良い音がして、文字どおり鳥肌が立ったが、それから急に、ある意味で極めて冷静になった。
その音色に、全ての状況に対する怖れと疑問は吹き飛ばされてしまい、ただこれを弾いてみたい、という欲望の核心だけが残る。
レコはバイオリンを構えたまま、灰色の目に熱を浮かべ、ちろりと舌先でピアスをした薄い唇を舐めた。
家を出て以来、アコースティックのバイオリンを弾いたこともなかったし、そもそもクラシック楽器の優美な生音より、エレクトリック楽器の猥雑でトリッキーな音色がずっと好きなのだと思っていたが、それでも自分の中に、純粋で古典的な美しい音色に対する欲望と野心がまだ眠っていたことに、レコは改めて気が付いた。
レコは目を閉じたまま、静かに「レクイエム」の一曲を弾き始めた。
この店にはおよそ似合わない、荘厳な鎮魂歌が響き渡り、店にいた客たちは、次第に会話をやめ、じっとそちらに視線を遣りはじめた。
静かに始まった曲は、次第に激しさを増していく。元は合唱付きのオーケストラ曲であったから、かなりの斬新なアレンジを施されていたが、誰もそれが本人の手になる完全な即興であるとは思わなかっただろう。〔……〕
「レクイエムか……まるで、女王に捧げられているみたいじゃねえか」
— World System: Origin-E #19
客の誰かが感慨深く呟いた。極めて有名な曲であったから、クラシックを聴かない者たちも、大概メロディくらいは耳にしたことがあったのだ。
曲は次第に独創的になり、ほぼ原曲の面影を失って、ロックギターのような超高速の速弾きで情熱的に最後のフレーズを歌い上げ、ぴたりと止まった。
レコの演奏を賞賛した紳士は、バイオリンは「永久貸与」するからまた自分のために弾いてくれと告げ、密かにメモを渡して店を去った。
ルーテルたちはレコのバイト先を突き止め、様子を見にやってきていたが、勤務を終えたレコが深夜の歓楽街で高級バイオリンを無警戒に携えたまま怪しいハイヤーに乗るのを目撃し、尾行する。
「あ、大変、車に乗っちゃう」
幸運にもタイミングよく空車のタクシーが通りかかったので、三人は慌てて止めて乗り込んだ。
「前の黒いダントーニを追ってください!」
ルーテルが真顔で言ったので、アンジュは思わず両膝を叩いて、
「ちょ、人生で一回は言うてみたかったセリフやないか、先に言われてしもた——」
「わかりました。って、ルーテル先生?」
運転手が車を発進させつつミラー越しに後ろを見る。なんと、それはフレイヤだった。〔……〕
「おっと、危ない——あの車、プロのようね」
— World System: Origin-E #19
「なに、プロって?」
奏が怯えた声を出す。
「残念ながら、尾行に気付かれています、いま信号で撒こうとされました。そういう訓練を受けた専門業があるんです、黒のダントーニ・チェルヴォなんて、いかにもよ」
「ええ? なんでレコがそんな車に?」
「メモを見ながら何か探していたから、迎えの車に乗ったんでしょ」
「大丈夫よ、今の発進のタイミングは計算が甘かったから、プロとはいっても名人じゃなさそう。負けませんよ」
フレイヤは平然と笑う。
黒い車は深夜の七区の裏通りを複雑に曲がりながら走行したが、フレイヤは着実に追っていく。……
フレイヤのおかげで、ルーテルたちは隣の区まで追跡に成功した。驚いた奏は彼女も「専門業」なのかと尋ねたが、フレイヤは「ごく普通のタクシー運転手」だと答えた
だが、レコが入っていったホテルに近づこうとしたルーテルたちは、何者かに魔道の「術」で眠らされてしまう。
路地の奥から、深夜だというのにサングラスをかけた黒いスーツ姿の長身の男が姿を現し、膝を突くと、三人の首筋に手を当てて脈を確認する。
— World System: Origin-E #19
その背後からもう一人、全身黒ずくめの軽装に手袋をし、中折れ帽を目深に被った細身の人物がやってきた。
「……乱暴すぎる。死んだらどうするんだ」
帽子の人物は冷ややかな声で咎めたが、
「術で眠らせただけです、害はありません」
サングラスの男は平然と答えた。
「記者?」
「違ったようです。カメラを持っていませんから」
サングラスの男はアンジュとルーテルの頭を掴んで顔を見せる。
「こちらの二人に、覚えはございませんか?」
帽子の人物は傍らに立ったまま、街灯の薄明かりで順に眺めたが、首を振った。
「いや」
「ですが、もう一人は、若様もご存じのはずです」
若様と呼ばれた帽子の人物は、最後の一人を見て、驚いた声を出した。
「奏くん?」
豪奢なホテルの一室で目を覚ましたルーテルは、レコに再会する。下っ端ながら魔道士であるルーテルには術が効きづらく他の二人より先に目を覚ました
バーにやってきた若紳士は付け髭で男装したヤンナで、彼らを襲擊した魔道士はパパラッチと「政敵」を警戒していたミカの護衛シーラスだった。野心家ティモによるヨアキム暗殺未遂説まで浮上する中、レコの安全を危惧したヤンナは彼を匿名で呼びよせ、ホテルに軟禁したのだ。
ヤンナが持ってきたバイオリン「スピネリ」は、長兄トゥオモが女王に「音が個性的すぎる」とオーケストラでの使用を禁じられ置いていった遺品だった。さしもの非常識なレコも「人のモンを勝手に貸与したのかよ」と呆れたが、ヤンナは相応しい者が弾くべきだと答えた
ヤンナとミカに四年ぶりの再会を果たしたレコだったが、家族の死を悲しむ様子もなく家長争いに関心を寄せる二人に反感を抱く。
「……は? おまえらは身内のくせに、追悼もせずに、早速権力争いかよ。あんな独裁者の女王様だって、実の祖母ちゃんなんだぞ? ミカ、おまえは誰より可愛がられてたくせに——涼しい顔しやがって」
睨まれて、ミカは一瞬険しい顔をしたが、何も言わない。〔……〕
「悲しんでいないわけじゃない。だが我々には今、私的に悼んでいる暇などないのだ。日程は調整中だが、帰国が叶い次第、合同の葬儀が行われる——一族の歴史においても類を見ない盛大なセレモニーになるだろう。そのときに私たちは初めて、彼らのために涙を流し、安らかな眠りを祈ろう、荘厳な献奏でもってな」
— World System: Origin-E #20
「僕は別に、悲しくなんてないけどね」
ミカが冷淡な声で言って、ヤンナはそれをちらりと見やる。
「女王様は現役でタクトを取り続け、立派な王冠を被ったまま世を去ったんだ。稀代の天才指揮者、クイーン・アウニ・ラヤラの音楽と名声は永遠に生き続ける。お父様だって、一人の名奏者として音楽史に確かな足跡を残した。死んだも同然なのは、残された凡庸な僕たちの方さ」
あのときのレコと同じようなことを言うのだな、とルーテルは内心で思いながら、黙って聞いていた。歴史に名を残すことが人の価値であるのか否か、などという壮大なことを、彼はそもそも考えてみたこともなかったと思ったが、ミカは冷ややかに続ける。
「僕が悲しむとすれば、僕たち無名の兵士の憐れな未来について。あるいはこの手で女王を断頭台に送ってやれなかったことだけだ」
「よせ」
ヤンナはちらりとルーテルを見遣り、それからミカを見た。他人が聞いているんだぞ、と警告する視線だったが、ルーテルは複雑な表情で石のように沈黙している。
「断頭台?」
レコは兄の美貌を眺めながら、意外そうに言った。
「へえ。ミカ、おまえ女王を——恨んでたのか?」
アウニ・ラヤラは常に厳格だったから、世間に最愛の孫と評されるミカすら一切甘やかすようなことはなかった。それでも幼い頃から期待をかけていたのは嘘でなく、ミカの方もそれに応えるべく、熱心に研鑽していたとばかり思っていたのだ。
「……だったら何だよ」
ミカは伏し目がちに唇を噛んだ。
「親父のことも?」
「さあ。あの人は操り人形に過ぎないから、殺してやりたいとも思わなかったけど、別に、死んだって構わなかった——」
「よせと言っている」
ヤンナの声が険しくなったが、ミカは無視して続ける。
「トゥオモお兄様は、一族の凋落を見ずに死ねたんだから、幸せだろう」
いきなりヤンナは無言で弟の胸倉を掴むと、顔を拳で容赦なく殴りつけたので、流石にルーテルは焦った。
「あ——あの……」
ヤンナはレコの携帯電話を取り上げ、「女王」らの葬儀が終わるまで外へ出ることも外部へ連絡することも禁じると宣言して去る。ルーテルはその強引な態度に不快を覚え、逃げたいなら協力すると申し出るが、レコは無気力だった。
登場人物
脇役(?)のみなさん
ここまでLGBTQ+率90%以上
エキストラのみなさん
舞台裏
以前に登場した「バビロン」のステージだが、生演奏が売りの店なのでグランドピアノが置けるように拡張してみた
使用ポーズなど
中華レストラン CHINESE RESTAURANT
Poses: Simmerianne93 / xldkx / SnarkyWitch / Herecirm
Lot: "CyberPunk RunDown Restaurant" by Helena-Melisa (Modified by me)
Build/Buy CC: SimderTalia / xldkx / tukete
ニュース速報 BREAKING NEWS
Poses: Simrama
ニュース映像 LIVE NEWS BROADCAST
Poses: r-jayden / simmer_creator / Alpine-Lapine / The Royal Sims / Natalia-Auditore / woolfiesims
Deco Sims: thedevilliers / Reigningsims
法律事務所 LAW FIRM
Poses: Anika
Build/Buy CC: MXIMS / NynaeveDesign / Syboulette / novvvas / Sanoysims / Felixandre / RH / Around the Sims / Pierisim / leosims
駐車場 PARKING
Poses: Akuiyumi
Lot: "the parking garage" by flubber32c4 (Modified by me)
Build/Buy CC: Lory Sims / Felixandre
バー BAR
Poses: Whimsyalien / Natalia-Auditore / TenyraSims / AA / Herecirm / LiBet / Rebouks
Build/Buy CC: Bostyny / Ung999 / MelBennett / Soloriya / SIMcredible / Felixandre / Pierisim / Omorfi-Mera / Pralinesims / peacemaker_ic / kardofe / Simmila / Wondymoon / Around the Sims / leosims / PETERJAMES88 / necrodog / Moniamay72
Deco Sims: downwithsims / STARRY / madebycoffee / lazysimmies / someone-elsa
タクシー TAXI
Poses: OpheliaSim / madebycoffee / Herecirm
Lot: Based on "Downtown" by RedMoon_Siren (Modified by me)
Build/Buy CC: NataTanec / YUZU
路地 ALLEY
Poses: SimmErika / Natalia-Auditore / Herecirm
Build/Buy CC: Tyler Winston Cars
ホテルの部屋 HOTEL ROOM
Poses: talentedtrait / Herecirm / goldoradove / megami-sims / Simmerianne93 / Maoni_cat / Moriel
Build/Buy CC: Golden Sanctuary Sims / Felixandre / SSTS / Soloriya / Plush Pixels / Chateausims / Wondymoon / Around the Sims / TheJim07 / Severinka / Shushilda / Sanoysims / Moniamay72
* Also used on #007-009















